てんしの自由帳。

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きらきら、きらきら 。

 

とんでもなく遠く離れたおとぎの国の話や何処かのドラゴンの話、そんな大それた悲劇の話に飽き飽きしたころ、日常の中にある異常を切り抜いた話に魅了された。でも、結局そんなありそうでない世界へのパスポートは2015年になった今でも発行されそうにない。そうして本当に僕は”この”現実と戦わないといけない、と知り、押入れの中を探したって、トイレの中を覗き込んだってそんな世界の入り口はどこにもないのだ、と気づいてしまった大学二年生の僕。そんな僕の部屋で少し大きめのバスタオルを頭からかぶった女の子がぶつぶつと彼女なりの魔法の呪文を唱えている。まだ、彼女にかかった魔法は溶けていないのだ。ぶつぶつ、ぶつぶつぶつと何度も何度も唱えている。けれども、何度も何度も、この先何千回何万回と唱えたって、僕たちの苦悩とは無関係に、夜空には流れ星がきらきらと流れていくだけで、彼女の魔法はもちろん、願いだって叶うわけない。ただ、きらきらと流れていくだけだった。そのことに、彼女はまだ気づいていない。きらきら、きらきら。流れ星は流れ続けてやがて、僕の実家やそれよりも遠い世界の場所へも繋がっていくのだろう。きらきら、きらきら。そんな世界で生き抜いていかないといけない。きらきら、きらきら。どうしようもない世界で生き抜いていかないといけない。きらきら、きらきら。僕は机の上に出しっぱなしにしてあった缶ビールを飲み干した。ぬるかった。それから、彼女に言った。

「夜もだいぶ更けたから、久しぶりに外に出よう。」

彼女は少し大きめのバスタオルからひょっこり顔をだした。彼女が言う。

「ええ、もちろん。」

それから彼女も缶ビールのふちに残っていた液体をちびちびと舐めた。顔を一瞬しかめて、それから嬉しそうに彼女が言う。

「ぬるくてまずい。ぬるくてまずいねぇ。」

それからアパートの前を二人でとぼとぼと歩いた。二人の影は長く伸びて、その伸びた先で繋がって、また分かれているみたいだった。彼女が言う。

「もう、あなたは成長しきってしまったのね。」

僕は言う。

「そう、、かもしれない。」

これは仕方ない、仕方のないことなのだ。この世界で生きていくためにはそうするしかないのだ。こうやって社会に出て大人という生き物になるというのはそういうことなのだ。僕がどう抵抗したって受け止めないといけないことなのだ。僕の顔の上をほろほろと涙が流れていく。ほろほろ、ほろほろ。彼女が言う。

「じゃあ、これからは別々の世界に生きることになってしまいますのね、、。」

彼女は少し寂しそうな顔をした、気がした。

 

それから月日がたった。

その時の彼女はきっと僕にとっての流れ星だったのだ。きらきら、きらきら。今でも彼女は僕の頭上できらきら、きらきらと流れては消えていく、おほしさまになったのだ。

きらきら、きらきら。