てんしの自由帳。

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真夜中の午前五時 。

はずしたイヤフォンから聞こえたのは
なんだったけな、思い出せないや。

真夜中の午前五時。
あたしは大学の真ん中の道を自転車で突っ切った。普段は学生のありふれた思想が交錯して失踪していく未知の上を、あたしは興奮を抑えながら自転車で疾走した。酔いは完全に冷めていた。周りはやけに青白い。月が白く照らすのか、太陽が白く照らすのか。どっちつかずの午前五時。あたしは静かにイヤフォンから流れるリズムを刻んだ。小さく揺れる太股がやけに冷たい。今日は雨が降るようだ。イヤフォンの外では、やけに車のエンジン音が大きく聞こえる。あたしはもっと小刻みにリズムを刻んだ。ボリュームを上げてもあがらない、そんな午前五時。それでも追いかけてくる車の騒音。あたしはそれを振り払おうとしてスピードをあげた。それでも、それでも追いかけ絡まろうとする街の騒音、外野の警笛。あたしは更にスピードをあげた。自転車だって空を飛べるのだ。あたしを止めることができるのはあたしのこれだけなのだ。刻め、刻め、あたしのふともも。明日の向こう側へ行くために、全力で自転車をこぐのだ。動け、動け、あたしの心臓。進め、進め、あたしのみち。

プツンっ
と急に街が静まった。

はずれたイヤフォンから聞こえたのは
なんだったけな、思い出せないや。

裸のあたしには今、
小鳥のさえずりだけが染み渡って行く。
青い、青い、しあわせのいろ。
あたしはもう、自由に飛べる。